企業の社会的責任の観点や、企業や社員を守るために、取引先のコンプライアンスチェックは必須事項の一つとなっています。しかし、具体的に何をどうすればよいのか分からず、お困りの方も多いのではないでしょうか。本記事では、コンプライアンスチェック・反社チェックについての、基礎知識と具体的な方法について紹介します。
【目次】 ■コンプライアンスチェック・反社チェックとは ■企業にとってなぜコンプライアンスチェック・反社チェックが必要なのか? ■コンプライアンスチェック・反社チェックを行うにはなにをすればいいのか? |
コンプライアンスチェック・反社チェックとは
反社チェックの概要
反社チェックとは、取引先企業やその役員、株主の中に反社会的勢力との関係を疑われる人物や組織が存在しないことを確認し、反社会的勢力との関わりを防ぐ活動のことをいいます。コンプライアンスチェックとも呼ばれています。尚、反社会的勢力とは、暴力団や半グレ集団をはじめとした、犯罪組織及びその共生者たちを指します。
反社チェックの現状
平成19年に政府より「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が発表されました。ここでは、反社による被害を防止するための基本原則が記されています。しかし、確認方法については細かい言及はされておらず、その方法や手段は企業にゆだねられているのが現状です。また、警察庁には「暴力団情報データベース」が存在しますが、現段階では、金融機関等を除き外部の人間が簡単には利用できません。そのため、調査方法がわからず困惑している企業が、多数見受けられます。
企業にとってなぜコンプライアンスチェック・反社チェックが必要なのか?
企業はなぜコンプライアンスチェック・反社チェックを行う必要があるのでしょうか。ここでは、企業がチェックを必要とする背景や理由について解説します。
1.政府指針
先述した通り、平成19年に政府より「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が発表されました。ここでは、契約書に反社条項を入れることと、反社会的勢力の情報を集め、自社でデータベースを構築することなどが具体的な対応として挙げられています。法令ではないため法的拘束力はないものの、政府は、民事訴訟等の場において裁判所が当指針を参考にする可能性はあると述べています。
2.各都道府県の暴排条例
各都道府県は、平成21年から平成23年の間に暴力団排除条例(通称:暴排条例)を制定しました。その中で企業に対し、下記の対応などを求めています。
・暴力団に対する利益供与禁止
・暴力団の威力の利用禁止
・暴力団事務所に利用される不動産譲渡・賃貸の禁止
・契約書に暴排条項を設置
なお、自治体により多少内容が異なる部分もあるため、該当自治体の暴排条例を熟知しておくことが大切です。
3.金融庁の監督指針
金融機関に対し、金融庁は「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」の中で「反社会的勢力による被害の防止」に関する規定を設けました。また、平成30年より、金融機関は、警察庁の暴力団情報データベースに接続する取り組みを行っています。企業が反社と関係を持つことは、金融機関との取引ができなくなるリスクを負うことにも繋がるのです。
4.証券取引所の新規上場審査基準
東京証券取引所が定めた「上場審査等に関するガイドライン」には、「反社勢力防止のための社内体制の整備」を確認する項目があります。上場を考える段階になって、反社との関わりが見つかることは、企業にとって大変な痛手です。この点からも、会社立ち上げの時点から、先を見越して取引先の確認に手を抜かないことが大切になります。
5.企業のリスクマネジメント
何より反社に関する確認は、企業の自衛のために必要不可欠です。反社勢力と関わることによって、行政処分を受けるリスクや訴訟を起こされるリスク、金融機関からの融資を受けられなくなるリスクが発生します。また、反社会的勢力との関わりが露見することによるレピュテーションリスクは大きく、企業の信用が失墜し、倒産に至る例も起きています。このように、取引先に法令順守しない個人や集団を持つことは、企業にとって大きなリスクとなります。そのため、契約締結前に取引先の確認を十分行うことで、リスクを未然に防ぐことが重要になるのです。
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見極めの難しい反社会的勢力
多くの企業が反社との関わりを避けたいと考える一方、見極めは非常に困難になっています。
実態を、NPO法人などに偽装して活動しているものや、いわゆる「フロント企業」を作り、暴力団との関連を巧みに隠していることもあるのです。加えて、偽装解散や偽装脱退のケースもあります。また、半グレ集団をはじめとした、準暴力団の勢力が広がっており、実態が掴みづらくなっていることも関係しているのです。
指定暴力団に属する構成員に関しては、警察も把握していると言われています。しかし、上記のような現状のため、警察ですら把握が困難な反社勢力が増加しているのです。状況は絶えず変化しています。暴力団以外にもその勢力が広がっていることを認識し、企業側でも反社の意味を広義に捉え、対応していく必要があります。
コンプライアンスチェック・反社チェックを行うにはなにをすればいいのか?
ここでは具体的な方法について解説します。企業規模や状況などにより、必要となる確認範囲は異なります。状況に応じて、必要な対応を行うと良いでしょう。
【具体的な手法例】
■契約書に反社条項を設置
契約書に反社条項を設置します。反社条項とは、反社会的勢力が取引の相手方となることを拒絶する旨や、契約相手が反社だと発覚した場合、直ちに契約解除できる旨を定めたものです。また、契約の際には反社条項に対する取引先の反応を確認するのが良いでしょう。合理的な理由もなく反社条項締結を拒む、押印を躊躇したりする様子などに注意します。
■会社情報の確認
a.取引開始の経緯を確認
取引理由に不審点がないか、紹介者がいる場合は、その素性も確認が必要です。
b.商業登記情報(履歴事項全部証明書)による役員・商号・住所・事業目的の変更履歴確認
これらの内容を、不自然なかたちで頻繁に変更している場合で、合理的な理由が確認できないケースでは、取引はやめておいた方が無難でしょう。また、閉鎖登記や不動産登記に不審点が隠されていることもあります。そして、提示された住所を画像地図などで検索しておくことも大切です。万が一、事務所としては相応しくない建物であれば、さらなる調査、現地確認、実在性の確認も検討しましょう。
c.会社ホームページの確認
会社概要を確認し、不審な点がないかチェックします。業歴に怪しい点がないか、取扱商品・サービスに不審な点はないかを確認すると良いでしょう。
d.業績や財務、取引実績の確認
業績・財務についても急激な変化や不自然な資金調達の形跡がないか等の確認を行います。また、取引実績を確認することで、取引先がどのような会社と関与しているのか確認できます。取引先の取引先にも注意を払うといいでしょう。
e.風評の確認
同業者や業界内での評判やうわさを確認します。業界団体などがあれば、そこに相談してみるのも一つの手段です。最近はインターネットの掲示板などに、好ましくない風評が書き込まれている例もあります。
■インターネットで検索
インターネット上の検索は、簡単に出来るので一度は行うと良いでしょう。企業名や代表者名・役員名などを検索し、反社会的勢力に関する情報が出てこないか確認します。また、会社名や、代表者名と下記の単語をAND検索することも有効です。
例:〇〇会社 AND 暴力団
キーワードの例:ヤクザ・暴力団・反社・違法・違反・グレー・不正・逮捕・虚偽など
■メディア記事検索データベースで検索
メディア記事検索ができるデータベースを利用している場合は、キーワード検索を行います。上記のインターネット検索同様、会社名や代表者名に特定の単語でAND検索を行うことが有効です。
なお、自社で調査を行う場合、調査方法やプロセス、検索結果のスクリーンショットなどを証拠として保存しておきましょう。コンプライアンスチェックを行った証拠となります。また、一般的なインターネット上の調査だけでは十分とは言えません。この段階で怪しいと感じる取引先があった場合は、さらに詳細を調べましょう。
■専門調査機関に依頼
懸念情報が出た場合、一企業による調査には限界があります。反社と関係を持ってしまうことにより、企業がこうむる不利益は甚大です。契約関係を結ぶ前に、精度の高い、専門の調査サービスや外部業者を利用すると良いでしょう。
■行政機関に照会
さらに危険性を感じた場合は、行政機関及び外部団体へ相談してください。
具体的には
・警視庁の組織犯罪対策第三課
・警察署
・全国暴力追放運動推進センター
・各都道府県の暴力追放センター
・警視庁管内特殊暴力防止対策連合会
などが該当します。
照会を行うには必要書類の提出などハードルが高い面はありますが、確認したい取引先の情報を元にデータ照会を行うことが可能です。
コンプライアンスチェック・反社チェックの方法やツールの選び方
ここまで、反社チェックの主な手法例を紹介してきました。反社チェック・コンプライアンスチェックの手法は、これさえやればOKというような規定されたものがありません。そのため、企業ごとに自社の業態や規模、取引リスクなどに応じて必要な精度を考え、どれだけのコストをかけるのかについて合理的に定めることが必要となります。特に、上場企業の場合は、反社勢力との取引が発覚した場合の訴訟リスクやレピュテーションリスクが大きいため、事前確認は必須といえます。しかし、現在、非上場の企業であるからおろそかにしてよいというわけではありません。自社を守るためにも、コンプライアンスの観点からも、できるだけ多くの手法を駆使して精度の高いチェックを行うべきでしょう。
また、コンプライアンスチェックは、反社会的勢力のチェックに限定せず、法令順守に反している企業のチェックを行うことも肝要です。具体的には、代表者・役員の逮捕歴の有無、整理屋、取り込み詐欺などの経済犯罪の履歴や、違法行為や不祥事、行政処分といった事象が挙げられます。こういった履歴がある企業と取引を行うことは、自社の社会的信用も大きく損ない、経済的損失を被るリスクにも繋がる可能性があるのです。
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