なぜ企業に与信管理は必要なのか?
基本的な考え方や調査・分析方法について解説

「与信管理」は日常生活の中でよく見たり聞いたりする言葉ではないため、多くの方にとってあまりピンとこないかもしれません。「銀行などの金融機関がやること」「自分たちの仕事には関係ない」などと思うかもしれませんが、企業対企業(BtoB)の商取引において与信管理は不可欠なフローで、基本的にはどのような会社でも与信取引を行っています。つまり、取引先と契約を締結する営業スタッフはもちろん、その営業を補佐する管理部門の担当者も、与信管理の目的や方法を正しく理解しておく必要があるのです。

とはいえ、人事異動によって審査部や法務部などの管理部門に配属されたばかりの方や、営業部門に配属されて日が浅い方にとっては、わからないことも多いでしょう。業務に際して重大なトラブルを招くことがないよう、あらかじめ与信管理の意味や全体像を押さえておくと安心です。

 

 

【目次】

■与信管理とは
└ 与信管理の全体像
└ 与信管理の重要性

■与信管理の方法と基本的な考え方
└ 与信管理の方法
└ 与信管理の主な流れ

■信用分析~定量分析と定性分析~
└ 定量分析のメリットとデメリット
└ 定性分析の重要性

■与信管理における最重要ポイントは、多角的な情報収集

■与信管理・信用調査はトーショーにおまかせください

 

 

「与信管理」とは?

与信管理の全体像

普段私たちが買い物などをするときは、商品を手にしたり、サービスを受けたりするのと同時にお金を支払うのが普通です。

しかし、受発注が頻繁に発生するBtoBビジネスにおいては、「契約のたびに現金を受け渡しする」というやり方は現実的ではないため、「商品やサービスを提供した後に代金を受け取る」という方法を選択するケースが多くあります。この、事後に代金を受け取る取引形態を「与信取引」といいます。

与信取引には、代金の回収ができないというリスクがあります。 そのため、代金の回収可能性を高め、万一未回収が発生した場合の損失を最低限に抑えられるようにコントロールしなければなりません。 この与信取引におけるリスクマネジメント活動全般が「与信管理」です。与信管理には、与信取引を行う前に取引先をどの程度信用できるのか支払能力 を確認する「信用調査」や、自社にとってのリスクの許容額をコントロールする「与信限度管理」などのプロセスがあります。

与信管理では、信用調査によって収集した情報から「相手企業の信用の程度に応じて、取引金額の規模や回収期間の許容範囲」を設定し、定期的に見直しを図ります。後払いの場合は取引先の倒産などによって代金が支払われないおそれもあるため、与信管理の活動を通して相手企業の信用度を常にチェックし、リスクに対処する必要があるのです。

与信管理は、取引先から代金を確実に回収し、万一の際のリスクを最小限に抑えるための不可欠な経営活動であり、企業経営におけるリスクマネジメントの重要な活動の一つなのです。

 

与信管理の重要性

適切な与信管理を行っていないと、取引先が倒産するなどで代金が回収できない事態に陥ることがあります。この回収不能の状態を「焦付き」といい、予定していた入金が見込めなくなった場合には、企業の業績や資金繰りへの悪影響が避けられません。

例えば、計上見込みだった1,000万円の売上を回収できなかった場合、企業がその損失を取り戻すには「1,000万円の売上」ではなく「1,000万円の利益」が必要になります。利益率 を5%とすると、2億円の売上を作り出さなければ損失を補填できない計算です。これを見ただけでも、焦付きが業績に与える影響の大きさをおわかりいただけるでしょうか。

また、焦付きは資金繰りにも悪影響を及ぼします。入ってくるはずのお金が入って来ないと、資金繰りの計画に狂いが生じます。取引先への支払いや銀行への返済などに支障をきたし、首尾よく資金が確保できなければ、自社も連鎖倒産の憂き目に遭いかねません。

焦付きが頻発すると、不良債権発生による対外信用力の低下や、債権回収や事後処理に対するスタッフの負担増を招き、企業活動の遂行にとって大きな障害となります。このように、与信リスクは与信取引をする企業において非常に大きな経営リスクとなるため、適切な管理体制の構築や、取引先の信用調査などが必要になります。

 

>与信管理とは何か、与信管理業務を行う上で重要なこと

 

与信管理の方法と基本的な考え方

 

与信管理の方法

与信管理には、回収不能リスクを回避し、または万一リスクが発生した場合の損失を最小限にとどめるためのあらゆる方策が含まれます。 特に以下の二つ の活動は、与信管理における主要な手法として多くの企業で採用されています。

 

信用調査 新規取引先や既存取引先の支払能力 に問題がないか、信用状況を定点的に調査する方法
信用限度管理 取引先の信用度に応じて適切な債権残高の最高額を定め、実際の債権残高がそれを上回らないように常にモニタリングする管理手法

 

信用調査については、自社で主体的に取引先の情報収集を行い、信用状況を分析することが求められます。とはいえ、信用状況の分析には専門的な知見や正しい判断を行うため情報が不可欠。そのため、第三者である信用調査会社を利用して調査結果を取得し、その掲載情報および評点を参考にするケースもよくあります。

 

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与信管理の主な流れ
STEP1 :取引先に関する情報を集める

まずは、取引先の情報収集を行います。情報入手ルートは大きくわけて2パターンに分類でき、自社で直接入手する「直接情報」と、業界内の同業者や信用調査会社など第三者から入手する「間接情報」があります。

直接情報は、営業現場が持ち帰る情報や、取引の履歴データなどの内部情報が主なものです。一方の間接情報は、信用調査会社から入手した情報や調査レポート、また業界内での風評・同業者からの噂などが該当します。判断材料となる情報をできるだけ多く収集することが、与信管理における最重要ポイントです。

 

STEP2:入手した情報をもとに分析・評価する

情報収集ができたら、その情報をもとに信用分析を行います。

分析方法は、決算データなどの「数値化できる情報」をもとに分析する「定量分析」と、経営者の性格、会社の評判などの事象や風評 といった「数値化できない情報」をもとに分析する「定性分析」があります。

また、与信先の信用度だけでなく、審査対象となる取引そのものの条件や内容、仕入先 ルートからエンドユーザーに至るまでの商流の分析も重要です。各分析方法を用いて、多角的に分析・評価を行うことがポイントです。

 

STEP3:与信判断を行う

分析・評価をもとに、取引をしてよいかの判断を行います。また、取引を行う場合には取引先の信用度に応じて、「いくらまで取引をしてよいか」の指標である債権残高の最高額を検討し、「与信限度額」として設定します。

なお、与信限度額の設定は取引開始時のみでなく、増枠申請があった場合には再審査を行います。また、定期的に見直しを実施し、変化があれば減枠などの対応を行うことが重要です。そのため、取引先の動向には常にアンテナを張り、チェックするようにします。

 

信用分析~定量分析と定性分析~

取引先の信用分析と聞くと、決算書の分析(財務分析)をイメージする方が多いかもしれません。たしかに、決算書を見ればその企業のベースとなる信用度を把握できるので、取引先の決算書はぜひ入手して分析したいところです。しかし、決算書に記載された「定量情報」を用いた信用分析(定量分析)に頼る考え方には、メリットだけでなくデメリットもあります。

 

定量分析のメリットとデメリット

メリットは、主観が入らないので客観的に信用度を分析しやすく、また関係者への伝達も容易である点。しかし、特に取引先が中小企業の場合には、定量分析が有効でない場合やデメリットが生じるケースも少なくありません。

まず、金融機関ではない一般の事業会社では、顧客先の決算書を入手できないことも多いのではないでしょうか。また仮に入手できたとしても、決算書に記載されているのは過去の情報なので「適時性」に難があり、そして定量情報には粉飾決算のリスクがついて回ります。過去の倒産企業に目を向けてみると、倒産後に不正経理や粉飾決算が発覚――というケースも多くありました。机上の分析には限界がある、と考えておくべきでしょう。

 

定性分析の重要性

取引先の企業に関する情報は、定量情報だけではありません。むしろ、それ以外の「定性情報」のほうが多いといえます。定性情報は、数字では表せないヒト・モノ・カネにまつわる取引先に関するあらゆる事象、出来事、評判などに関する情報です。たとえば、登記事項から読み取れるような会社の経営体制はもちろん、経営者の性格やオフィスの雰囲気でさえも重要な定性情報です。業界内での相対的な技術力や販売力、経営状況に関する評価・評判なども、その企業の信用状況を推しはかる重要なバロメーターです。

定量情報と違って定性情報の分析には主観が入る余地があり、判断に際して経験や勘が求められる場合もあります。しかし、取引先のタイムリーな信用状況を把握し、危険な兆候を察知する際は、定性的な情報に頼る場面が多いものです。そのため、現場内外から取引先に関するさまざまな定性情報を収集し、継続的に分析することが重要といえます。

 

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与信管理における最重要ポイントは、多角的な情報収集

与信リスクを回避する最大のポイントは、取引先の異変や信用上の変化を示唆する“危険信号”をいち早く察知し、それに対して最適な手を迅速に講じることです。そのためには、やはり取引先に関する定量面および定性面の情報収集、そして分析が鍵になります。前述したように、危険な兆候を察知するような局面では定性的な信用情報による貢献が極めて大きいため、取引先の動向には常にアンテナを張り、信用上の変化をとらえることが重要です。

取引先の危険な兆候をつかむための情報入手ルートは、大きくわけて、自社で直接入手する「直接情報」と、業界内の同業者や信用調査会社など第三者から入手する「間接情報」の2パターンがあります。

直接情報は、自社営業担当者の“気づき”や、与信限度オーバーによる異常の察知などが主な情報源になります。特に営業担当者が自分の目で見聞きしている情報は、信頼度が高く重要です。そのため、そのような現場の情報が与信判断に活かされるよう共有体制を構築することが、企業には求められます。

一方で、取引先の状況を自社・自部署だけで365日・24時間常に監視できるわけではありません。そのため、「第三者からもたらされる間接情報」にもアンテナを張りましょう。過去の倒産企業のケースでは、事前に支払いぶりに関する信用不安の評判などが立つことも多く、このような外部情報を通して危険な兆候を察知することもできます。情報収集ネットワークの構築が、与信リスク回避の鍵といえるでしょう。

 

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与信管理・信用調査はトーショーにおまかせください

取引先の危険な兆候を察知するには、決算書などの数字には表れない定性情報の質が非常に重要です。株式会社トーショーではこの定性情報の質にこだわった情報収集を行っており、全国の企業に関する情報を素早くキャッチしてご提供しています。与信判断の鍵となる「入手困難な企業信用情報」に強いことも、当社ならではの特長です。

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また、トーショーの各種情報配信サービスには、配信した情報を自動で蓄積し検索できるシステムが付いています。過去の配信情報をお好きなタイミングで確認できるため、わざわざ新たなデータベースをご用意いただく必要がありません。

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