【与信管理実務】新規取引先との取引開始時の
注意点&チェックポイント

新たな取引先との取引開始時に、与信管理担当者はどういった点に気を付けて対応するべきでしょうか。本記事では、新規取引先に対して、取引開始時の注意すべき点やチェックポイントについて解説します。本記事の内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している『与信管理実務スペシャル動画』シリーズともリンクした内容になっておりますので、併せてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください。

>>トーショー公式YouTube【与信管理実務】新規取引開始時のチェックポイント
>>トーショー公式YouTube【与信管理実務】新規取引先の信用状況を検討する

 

<目次>

■貸倒れ(焦付き)の防止という観点が重要
■まずは新規取引先の「名義人」を確認
■登記事項証明書を取得し、取引先について調べる
■取引先と面談をして、事前に調べた情報の確認を行う
■新規取引先の信用状況(与信可能性)を検討
└ 定性分析
└ 定量分析
■まとめ

 

■貸倒れ(焦付き)の防止という観点が重要

新規取引に限った話ではありませんが、取引先の与信管理においては、まず貸倒れ(焦付き)の防止という観点が重要です。「貸倒れ」「焦付き」とは、取引先の倒産や債務不履行によって代金回収ができなくなることを言います。貸倒れ(焦付き)が発生すると、自社の業績と資金繰りに大きなダメージを与えます。仮に、利益率1%の商売をしていて、100万円の売上について回収不能が発生してしまったケースで考えてみます。この売上100万円を取り戻すには、いくらの売上が必要でしょうか。この場合100万円を取り戻すためには、1億円の売上が必要になります。これは、100万円の貸倒損失の穴埋めをするのは100万円の売上ではなく、100万円の利益が必要だからです。これを見ただけでも、ダメージが大きいということをお分かりいただけると思います。

また、取引先の債務不履行や倒産が発生すると、債権回収や煩雑な事後処理をしなければなりません。このようなことは、労力がかかることはもちろん、後ろ向きな業務であることから社員のモチベーションが下がり、会社の士気の低下を招くことも考えられます。そういった点でも、焦付きを防ぐという意識が肝要です。

 

■まずは取引先の「名義人」を確認

それでは「貸倒れ」「焦付き」を防ぐために新規取引においては、何を注意すべきでしょうか。まずは、取引相手が「誰なのか」を確認します。取引相手の「名義」を確認し、法律上の権利者をはっきりさせておきます。取引先が法人なのか個人なのかを確認するためにも、商業登記事項証明書を取得します。ここで登記がされていれば法人ですが、登記されていなければ個人事業主ということになります。相手からもらった名刺に「株式会社鈴木商店」と記載されていた場合、本当に株式会社として存在しているのかを商業登記で確認します。名刺には「株式会社鈴木商店」と記載があっても、実際には法人登記がされていないケースもあるため、必ず商業登記を取得するようにしましょう。

 

■登記事項証明書を取得し、取引先について調べる

取引先の商業登記事項証明書を実際に登記所(法務局)に行って取得する場合には「履歴事項全部証明書」を取得します。「履歴事項全部証明書」は交付請求日の3年前の年の1月1日以降の情報が記載されています。昔の登記簿は紙で管理されていましたが、現在はデータ化されておりインターネットでも情報の取得が可能です。一般財団法人民事法務協会が運営している「登記情報提供サービス」でも同じ内容が確認できますので、ぜひ利用してみてください(※但し、同サービスの情報には「証明書」としての効力はありません)。

商業登記に関する注意点としては、取引先が元の法務局の管轄外に本店移転した場合には、移転先で新たに商業登記が作成されるため、過去の履歴を隠すことができてしまうということです。そういった点も踏まえて、「閉鎖登記事項」もあわせて確認するとよいでしょう。登記事項は隠すことはできても消すことはできないのです。

商業登記を取得したら、企業の基本情報を把握します。商号、本店所在地、営業の目的、設立年月日、役員の記載があるので、内容の確認を行います。新規取引先では、履歴と変遷も確認するとよいでしょう。

まずは「商号」を見て、もらった名刺と商号が一致しているかを確認します。また、社名に“グローバル”、“大日本”、“ワールド”といった単語がついている会社は少し気をつけたほうがよいかもしれません。こういった単語がついている会社が一概に悪いというわけではないのですが、企業規模の割に大きいイメージを喚起する言葉がついているのは、何か意図があって実態より大きな会社に見せようとしている危ない会社の可能性も考えられるためです。

「本店所在地」では、頻繁に移転していないかをチェックします。もし頻繁に移転をしている場合には理由を確認するようにしましょう。

許認可が必要な貸金業、不動産業、旅行業、運送業、倉庫業といった事業でも、登記の「営業の目的」には勝手に記載ができてしまいます。本当に許認可を取得しているかは、念のため別途確認するとよいでしょう。
商業登記を取得したら、不動産登記もセットで取得するとよいでしょう。不動産登記では、担保設定の状況はどうか、差押・仮差押など権利の制限を受けていないか等、取引先の信用状況を様々窺い知ることができます。

登記は公開情報なので、誰でも取得できます。また、誰が取得したかは相手企業には分かりません。新規取引先に対しては必ず取得しましょう。

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商業登記事項のチェックポイント

 

■取引先と面談をして、事前に調べた情報の確認を行う

このように事前に取引先について調べたら、取引先と面談をして直接話を聞きます。机上で収集した情報だけではなく、実際に目にしたり耳にしたりする情報が重要です。面談する際は、できれば先方の社長から話を聞くのがよいでしょう。中小企業は社長がすべてと言っても過言ではありません。社長と面談ができなければ、会社のことをよく知る財務や経理の責任者と面談をして、その会社の詳細について質問し、事前に把握した登記内容や企業概要と齟齬がないかの確認を行います。事業目的が企業概要と不釣り合いではないか、事業内容が企業規模の割に多岐にわたりすぎていないかといった観点で話を聞きましょう。

立て板に水のように喋りすぎる人や、聞きもしていないことを喋る人は要注意です。自分を大きく見せようとしている可能性もあります。面談している際は、先方の話を鵜呑みにしないように意識しつつ、話に矛盾がないか気を付けながら聞きましょう。

 

■新規取引先の信用状況(与信可能性)を検討

取引先について情報収集ができたら、それらの情報をもとに分析を行います。分析方法は情報の種類によって異なり、経営者の性格、会社の評判などの事象や風評といった「数値化できない情報」をもとに分析する「定性分析」と、決算データなどの「数値化できる情報」をもとに分析する「定量分析」があります。

 

定性分析

定性分析とは、「事象」や「外部の評価」といったヒト・モノ・カネに関する情報、いわゆる「定性情報」を用いて分析を行うことをいいます。具体的には、経営者の資質、従業員の定着率、企業の技術力・販売力、大株主や支援状況、銀行との関係などを分析することです。特に、中小企業は経営者の資質が大事です。社長の経営能力がどれほどのものか、できるだけ多くの情報源から情報を入手し推察します。こういった様々な情報は、決算書を入手できなかった場合においても役に立ちます。

定性情報の入手ルートは大きく分けて「内部情報」「外部情報」があります。内部情報では、自社の営業部門と情報を共有することが基本です。営業部門は取引先と日ごろから接しているので様々な情報をキャッチしているはずです。そういった情報は生きた情報ですので、信頼度も高く重要な情報です。

一方、外部情報は自社以外の第三者から収集した情報です。先述した商業登記や不動産登記も外部情報であり、ニュース報道や業界紙、信用調査レポートなど信用調査機関からもたらされる情報もそれにあたります。
信用調査機関から得た情報は、プロの調査員が取材した内容も含まれており、利用価値が高いものになります。自社だけではすべての情報を入手することが難しい場合もありますので、外部からの情報収集も活用するとよいでしょう。ただし、外部から入手した情報が自社で把握している情報と異なる部分が出てきたら徹底的に調べるという姿勢は大事です。

 

定量分析

定量分析は、決算データなどの数値化できる情報である「定量情報」を用いた分析方法です。主な定量分析としては、財務分析があります。これは決算書を使用して収益性や財政状況を分析する方法です。

財務分析を行う際には、3期分の決算書を入手し行うのがよいでしょう。1期分でも儲かっているか借金がどれぐらいかは分かりますが、その会社の業績推移や財務内容の動きが分からないためです。過去3期において、売上は増えているのか減っているのか、借金は増えているのか減っているのか、在庫の動きはどうかといった事が3期分を見比べればある程度把握できます。財務分析では、動きを把握することが重要です。

決算書の入手は、可能な限り取引先から直接入手するのが良いでしょう。なぜかというと、疑問点を直接質問できるためです。「先日いただいた決算書で未収入金が多いのはなぜですか?」というように具体的な質問ができます。直接決算書が入手できない場合には、信用調査機関の調査レポートなど第三者から入手するのも良いでしょう。
決算書の分析について、分析方法は「収益性分析」「安全性分析」「回転期間分析」の3つが典型です。収益性分析では、儲けているか損しているかを確認します。損益計算書を分析し、利益率がどれぐらいか、本業で儲けが出ているかなどを見ます。安全性分析では、自己資本比率、つまり過去の利益がどれだけ積みあがっているかを見るのがポイントです。安全性の観点からは借金は少ない方がもちろん良いですので、借入金の残高がどれぐらいあるのかを確認します。回転期間分析は効率性の分析とも言われます。使用した資本が、どの程度効率良く使われているかを確認します。

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財務分析の基本

 

■まとめ

新規取引時のチェックポイントとしては、貸倒れ(焦付き)を発生させないというスタンスで様々な事を調べることです。事前に登記情報を取得し、その会社の履歴を把握したうえで、直接訪問で相手を見極める、社長の人柄を推察するという観点で面談を行います。相手に騙されないようにするためにも事前の情報収集や分析は重要です。そのうえで、実際に見聞きした情報を合わせて判断することが肝要になります。

新規取引先に対し、収集した情報で定性分析定量分析を行い信用力を検討した結果、取引できると判断した場合でも、最初は少額から取引するスタンスが良いでしょう。実際に取引してから、思っていたより財務状況が悪かった、コンプライアンスに問題があったといったことが判明することもあります。そういった場合になるべく早く対応できるように慎重に取引を開始していくことをお勧めします。

 

■YouTubeでも詳しく解説!

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