コンプライアンスチェックを怠ると・・・どうなる?
事例で理解する、恐ろしい企業リスク

暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)の度重なる改正、各都道府県における暴力団排除条例の整備、大手金融機関の暴力団に対する融資の発覚など、社会的なインパクトのある事件を契機として、企業の「反社会的勢力との関係遮断」への組織的な取り組みは、年月を重ねるごとにその重要性を増しています。

 

反社会的勢力との取引を含む一切の関係遮断は、企業自身が直接の被害を防止するという観点のみならず、もしそれが発覚した場合には「社会的な非難を受け、企業の信用に大きなダメージをあたえ得るもの」として認識されるようになりました。そのため今日では、「取引先のコンプライアンスチェック」は組織が取り組む業務として必要不可欠なものになっています。

 

コンプライアンスチェックの基礎知識とその方法についてはこちらにまとめておりますが、本稿では反社会的勢力との関わりやコンプライアンスチェックの不備により、大きな代償を払った事例について取り上げていきます。海外取引に関する事例についても、後半で取り上げます。

 

【目次】

■コンプライアンスチェックを怠ると…どうなる?
└ K社の事例
└ S社の事例
└ O社の事例

■海外のコンプライアンスチェックは「安全保障貿易管理」の観点から実施
└ M社の事例
└ F社の事例

■トーショーではニーズに合わせたコンプライアンスチェックの効率化が実現可能

 

コンプライアンスチェックを怠ると…どうなる?

■K社の事例

K社は1990年代後半の設立ながら、当地における有力な設備工事業者として知られていた会社でした。大手ゼネコンなどに販路を構築し、地場のトップ企業に成長。近年は約50億円の年商で、安定した業績を維持していました。

新型コロナ感染症拡大の影響が大きかった2020年度の決算においても過去最高の売上を計上するなど、業績は好調そのものでした。

 

しかし、そんな順風満帆な経営を続けていたK社に一転、ネガティブな出来事が起きます。2021年の春、警察が「K社の役員等が、暴力団と『社会的に非難される関係を有していること』に該当する事実がある」と自治体に通報したことで、行政処分を受けることになったのです。

地場の有力企業の不祥事としてマスコミにも取り上げられ、築き上げてきた対外的な信用は一気に失墜。そこからほどなくして手形の不渡りを出し、自己破産を申し立てる事態になってしまいました。

 

まさにK社の社員にとっても寝耳に水、急転直下の倒産劇となった事例ですが、コンプライアンス違反、特に反社会的勢力との交際は社会的に絶対に許されない時代になったということを、あらためて世間に印象づけた事件となりました。

 

 

■S社の事例

K社の事例よりさかのぼること、十数年前の事件です。S社は東京証券取引所にも上場していた新興の不動産デベロッパーでしたが、やはり反社会的勢力との関わりから倒産してしまいました。

 

倒産直前の年商は1,200億円を超え、会社設立以来の好業績をあげていました。自己資本比率も45%近くあり、財務体質にも超優良と言っていい企業でした。

ところが、反社会的勢力とのつながりが表面化したことで、株価がストップ安になるなど一気に信用性が低下し、資金繰りが急速に悪化。都心部のビルを舞台とした立ち退き交渉で違法な行為があったと新聞に報道されてからわずか数カ月で、民事再生法を申請することになったのです。

 

この事件は、一般の企業にとって「反社リスク」の大きさがクローズアップされるきっかけとなった大きな事件として、今でもコンプライアンス関連の専門家の間では語り継がれています。

 

 

■O社の事例

O社の事例は、業績好調であったK社やS社のそれとは異なり、経営不振の会社が起こした不祥事発覚の事例です。

 

O社は1960年代に設立された記録媒体メーカーで、2000年代前半まで有数のシェアを誇り、新興企業向けの株式市場にも上場していました。しかし、インターネット配信が主流になりつつあるなか、記録媒体の需要減少や競争激化といった環境下で業績を徐々に悪化させました。リーマンショックのころから毎期のように赤字決算を続け、2013年度の決算でついに債務超過へ転落しました。

 

O社は債務超過を脱し、上場廃止を回避すべく資金調達に奔走することになります。そのような藁(わら)にもすがりたい状況で、反社会的勢力の接近を許してしまいます。当初は第三者割当増資の実施に際し、反社チェックの結果として割当先に「反社会的勢力等や違法行為に関わりを示す情報はない」との旨を公表していましたが、これがのちに虚偽であると発覚。2015 年の秋口に上場廃止の決定を証券取引所から受け、「整理銘柄」に指定されることとなりました。

 

こちらは資金調達先に反社勢力が紛れていた例ですが、コロナ禍で経営環境が厳しいなか、商取引の買い手として突如「救世主」のように現れた新規取引先に、反社会的勢力が紛れている可能性もあります。厳しい環境だからこそ、取引先のコンプライアンスチェック、反社チェックはおろそかにできないと言えるでしょう。

 

>>企業を守るコンプライアンスチェック・反社チェックとは? こちらでは基礎知識と方法を紹介します

 

海外のコンプライアンスチェックは、「安全保障貿易管理」の観点から実施

国内取引におけるコンプライアンスチェックは、これまで挙げてきたように主に「反社チェック」を指します。しかし、海外取引先に対するコンプライアンスチェックは、安全保障貿易の観点から軍事転用されるおそれのある先をチェックしたり、各国の規制リストに掲載されたテロリストや取引禁止企業との取引を避けたりする目的で実施されています。

 

以前、中国の大手通信機器メーカーが、米国商務省産業安全保障局の貿易上の取引制限リスト(エンティティリスト)に入ったことはご存じの方も多いでしょう。当時、日本の会社も同社およびそのグループ会社と大規模な取引をしているケースが多く存在していたため、大きな注目を集めました。米国の規制は「域外適用」といって、海外の企業にも規制を強制します。もし日本の会社がこれに違反した場合、日本企業自身も取引禁止先(Denied Persons)に指定され、実質的には米国企業との取引が不可能となるなど、甚大な影響を及ぼすことになるので注意が必要です。

 

また、海外の公的要人(PEPs)に関連する企業との取引が、やはり各国の規制する贈収賄の犯罪に該当する可能性もあります。相手先の関係者がPEPsに該当するかどうかのチェックも、「海外取引先に対するコンプライアンスチェック」の重要な要素となっているのです。

 

 

■M社の事例

大手商社M社の事例は、新聞でも大きく報じられました。東南アジアでの発電所建設事業の案件に絡み、公的要人への賄賂提供に該当するとして米国の海外腐敗行為防止法(FCPA)違反の罪に問われた結果、8,800万ドルもの巨額の罰金を科されたのです。

海外腐敗行為防止法(FCPA)も、外国企業による米国外での贈賄行為において域外適用されるとされており、M社の事例以外に、これまで日本の大手会社の摘発事例があります。

 

このように、海外取引を舞台としたコンプライアンスチェックの不備は、日本とは比較にならないほどの大きなダメージとなり得ます。海外進出をしている会社にとって、海外取引先のコンプライアンスチェックも決して軽視できない業務と言えるでしょう。

 

 

■F社の事例

M社の事例を見ると、「グローバルに取引を展開する大企業だけの話」と思ってしまうかもしれません。しかし、中小企業も安全保障貿易上のリスクとは無縁ではありません。

 

F社は2000年代初頭に設立された、産業機器や機械部品を取り扱う貿易商社でした。主に中国や東南アジアに進出する日系企業向けが主力だったようですが、北朝鮮に洗濯機やガスコンロなどを無承認で輸出した疑いにより、2019年に元代表が書類送検されました。中国などの第三国を経由していたものの、最終的な行き先は禁輸国である北朝鮮だったわけです。これは、日本の外為法(外国為替及び外国貿易法)違反の容疑にあたります。結果的にF社は、2020年に破産手続き開始の決定を受けて倒産してしまいました。

 

中小企業においても、安全保障貿易上のリスクは他人事ではないとおわかりいただけたのではないでしょうか。

 

 

トーショーではニーズに合わせたコンプライアンスチェックの効率化が実現可能

このように、自社や社員を守るため、そしてトラブルに巻き込まれないために、コンプライアンスチェックは不可欠です。トーショーではさまざまなニーズにお応えするコンプライアンスチェック関連サービスを展開しています。

 

時系列一括スクリーニング

行政処分などのコンプライアンス違反だけでなく、企業の信用にかかわる様々な幅広い情報を網羅的にチェックできるサービスです。

 

G-Searchデータベースサービス

トーショーでは株式会社ジー・サーチと提携し、網羅的に新聞や雑誌などのメディア記事検索ができる「G-Searchデータベース」を提供します。反社チェックにもご活用いただけます。

 

 

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