■定性情報とは
「定性情報」とは何か。端的に言えば「数値化できない情報」です。マーケティング用語として使用されることも多い言葉ですが、ここでは与信管理における「定性情報」について解説していきます。
与信管理における「定性情報」
与信管理における「定性情報」は、経営者の性格をはじめ、その会社の技術力や販売力などの強み・弱み、評判などの「事象」や「外部の評価」といったヒト・モノ・カネに関する様々な情報を指します。こうした情報は、数字の計算のように一律の分析結果を導くのは難しく、解釈を要する場合が多いものです。また、主観が入りやすく、分析に経験が必要となる場合も多いでしょう。ですが、実際に与信判断をするうえで参考にする情報は、定量情報よりも定性情報のほうがはるかに多いのです。
与信管理における「定量情報」
対して、与信管理における「定量情報」は、決算データなどの「数値化できる情報」です。数量・金額・回数などの数字を扱い、計算・分析が容易です。数字で説明されると多くの人が納得しやく、決算書は一見客観性が高い資料として企業信用分析の代名詞のように言われることが多いのですが、決算書には粉飾という大きなリスクがつきものです。また、決算書は入手時点では過去の状況を示すのみであり、適時性に難があるということも頭にいれておく必要があります。
定性情報と定量情報の比較
「定性情報」と「定量情報」には、それぞれ一長一短があります。具体的に、各情報のメリット・デメリットについて整理してみましょう。
定性情報のメリット・デメリット
◎定性情報のメリット
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- ・日々の取引先の変化をタイムリーに捉えることができる。
- ・キャッチできた情報次第では、迅速に対応し、焦付きを回避できる。
- ・決算書の入手ができない取引先についても情報を収集できる。
△定性情報のデメリット
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- ・「~らしい」という不確かな情報もあり、確認を要する。
- ・活用するためには、解釈と判断が必要で、経験や“勘”も必要。
- ・噂が出た会社が必ず倒産するわけではない。
定量情報のメリット・デメリット
◎定量情報のメリット
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- ・収益力や安定性を分析することで、取引先の信用の程度を知る目安としやすい。
- ・分析しやすく、良し悪しが判断しやすい。
- ・関係者への伝達や説得材料とすることも容易。
△定量情報のデメリット
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- ・決算データは、ある一時点または過去の一定期間のデータであり、適時性に難あり。
- ・必ず入手できるわけではない。
- ・数字自体の信頼性が保証されない。粉飾決算の可能性も。
- ・「倒産時期」までは予知しづらい。
「定性情報」と「定量情報」の特性を理解したうえで、それぞれの情報を上手く活用し、与信判断を行っていくことが重要といえるでしょう。
定性情報の重要性
与信管理における「定性情報」の特性やメリットは理解したけれど、やはり「定量情報」の方が、分析や情報伝達が簡便で取扱い易いという方も多いと思います。ビジネスマンは数字で説明されると納得しやすい傾向があるのも事実です。もちろん、与信管理においても決算書の分析は重視されますし、各社で独自に設定した社内信用格付や調査会社の評点、各種スコアリングなども考案され活用されています。しかし、定量分析偏重に落とし穴はないでしょうか?
決算書による財務分析、スコアリング、評点は万能か?
決算書による財務分析、信用調査会社の評点、各種の倒産確率や格付からは、その会社の総合的な“信用程度”はわかります。しかし、“信用程度”が高い会社は必ずしも倒産しないと言えるのでしょうか。例えば、評点が40点の会社と60点の会社では、40点の会社のほうが60点の会社よりも倒産する確率は高いに違いないですが、自分の取引先の某社が60点だから倒産しない、逆に40点だから必ず倒産するとは言えません。つまり、40点以下だから取引不可、60点以上だから絶対倒産しないなどと単純な線引きはできないわけです。
定性情報も含めた総合的な判断が必要
従って、このような“信用程度”は、取引先“全体”の質や自社が抱える売掛債権“全体”のリスク状況の把握やモニタリング、あるいは評点や格付が極端に低い会社を1次フィルターとして利用する分には有効ですが、この“信用程度”だけをもって取引先が“倒産するかどうか”を判断するには無理があります。実際、倒産確率が1.5%から2%になった、評点が45点から43点になったと言っても、その変化はひとつの“気づき”として参考になりますが、これだけで判断できるわけがありません。結局は、何らかの調査、確認行動、定性的な情報の収集・分析などを経て総合判断をする必要があります。
定性情報の重要性を理解し、倒産の兆候を見逃さない
既にお伝えしましたとおり、決算書から得られるのはある一時点または過去の一定期間のデータです。取引先の動向を把握するには、日々変化する定性情報を収集していく必要があります。それは、取引先に関する異常性の発見、“気づき”が焦付き回避の第一歩となるためです。企業が突然倒産するということは稀で、倒産する前には何らかの兆候が現れることがほとんどです。従って、取引先の変化を伝える“気づき”となる「定性情報」をキャッチすることは、与信管理担当者にとっての最重要課題と言えるでしょう。
定性情報の収集
では、その定性情報はどのように収集するのか。情報入手ルートの考え方は「自社で直接的に収集すること」と「外部から間接的に収集すること」の大きく2つです。
自社の営業担当者と情報を共有
まずは、自社の営業担当者と取引先の情報を共有することが基本です。営業担当者は取引先への訪問や担当者との会話から様々な情報をキャッチしているはずです。立地環境や社内の雰囲気、事業環境の変化等の情報をヒアリングし共有することが肝要です。こうした自社で直接収集する情報は第三者のフィルターが入らないため、もっとも信頼度が高い情報になります。従って、現場からの情報を吸い上げ・共有する体制を整えることは与信管理にとって重要と言えます。
外部情報を含めた網羅的な情報収集が不可欠
主体的に情報収集することは大切ですが、取引先の状況を自社だけで365日24時間把握できるわけがなく、取引先の信用に関するネガティブな兆候に気づけないこともあるため、外部のネットワークも利用して、広くアンテナを張り、業界内に流れる信用情報を収集することが欠かせません。こうした外部情報の入手ルートをしっかり確保しておくことは与信管理上の重要課題の一つでしょう。
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